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トリプル9 裏切りのコード (2016)

原題:Triple 9
監督:John Hillcoat
音楽:Atticus Ross
脚本:Matt Cook
上映時間:115分
出演:Casey Affleck, Chiwetel Ejiofor, Anthony Mackie, Aaron Paul, Norman Reedus, Woody Harrelson and Kate Winslet


暴力と銃弾が支配する社会では人の命はとてつもなく軽い。飛び交う銃弾の前に個々の人生の差異は限りなく小さいが、しかしそれでも個人はその暴力的な社会で自分だけの生を足掻き続けるしかない。
現代のオールスターキャストを使いながら、あえて個々の華やかさを出来る限り押さえつけられて演出されているが、それだけにどこを見ても、たとえ矮小であっても生きようとする反発的な情念のようなものが画面に漂っている。クライムムービー、警察ドラマとしてはオールタイムベストに挙げてもおかしくないほどの出来栄えだった

舞台はアメリカ、ジョージア州アトランタ。そこでは警察官はただ腐敗しているだけでなく、ギャングと手を組み、実際にギャングと行動を共にする者まで現れていた。この映画で登場人物の善悪を決定することに意味はない。殺人課の警官はギャングで、ギャングは中毒になった元警官で、最後の最後まで何を信じていいのかわからない。失敗すれば死ぬし、失敗しなくても死ぬという理不尽さだけが繰り返し立ち上ってくる。

タイトルの「トリプル9(999)」とは、警察の通信コードで、「警官が倒れた。全員現場に急行せよ」を意味する。その場合、しばらくの間警察の関心がそちらに全集中するため、その隙をついて国土安全保障省の施設を襲う、というのが本作のクライマックス。ちなみに本編では「ナイン・ナイン・ナイン」とも一度だけ言っていた。

メインキャラクターを一人に限定出来ないが、まず強盗グループはマイケル、マーカス、フランコ、ラッセル、ゲイブの五人、警察からジェフとクリスの伯父と甥、マフィアからイリーナと、これだけの主要メンバーが目まぐるしく動き回り、それぞれが裏と表の顔を使い分け、観客にとっては一瞬たりとも油断できない超ハイスピードの展開がとても新鮮。キャラクターは多いが、それでいて二時間を切る長さ。アッティカス・ロス(Atticus Ross)によるエレクトロニック系のダークな音楽も、無線のノイズっぽい音を活用しているところなどが非常に効果的。


以下多少のネタバレあり。


劇中、キャラクターの内面に一番大きな変化を起こすのは、マーカスとクリスのシークエンス。
マーカスは警官でありながらギャングでもあることに若干の後ろめたい感情を抱えている、まだ少なからず理想を残している男だが、現実では彼は地元のギャングとズブズブの関係にある。クリスは比較的治安の良い場所から異動してきた新任で、タフというわけでもなく少し甘いところもあるが、正義感の強い真っ当な警官。
当初反発し合っていた二人だが、彼らを含めた部隊は中間部あたりでギャングに対して突入作戦を実行する。そこでは無数の銃弾が飛び交うが、そのどれに当たっても命が吹き飛ぶ。この死線を潜り抜けた結果、二人に共通の理解が生まれた。
この突入作戦の緊張感は本当に見事で、(手持ちカメラを使った)視界の悪さの中、前後左右どこから銃弾が飛んでくるのか分からない。「クリア」の声が聞こえても全く油断は出来ない。こういう手に汗握る銃撃戦は最近のアメリカでも相当な準備をしないと制作できないだろうなぁと思う。
結局ギャングとマーカスが組み合って危地に陥っているところを、クリスが助けることで二人の感情に重なり合うところが生まれる。命のやり取りをした後に生まれる感情、それは銃弾を前にすれば「どっちが死んでもおかしくなかった」と思うことであって、それは銃弾の前に俺もお前も大差がないと認めることだ。その時マーカスは自分が殺そうとしているものの正体に気付く。マーカスは結局、トリプル9の計画を実行する際に甘さを露呈してしまい、反対にクリスは明らかに一回り成長することになった。


少し誤解されているようだが、ケイト・ウィンスレットの役はパンフレットによるとロシアンマフィアというか、ユダヤ系であるらしい。
「Кошерное мясо(コーシャの肉:ユダヤ教のカシュルートという規定のうち、食べてよいものをコーシャと言い、мясоはMeat、肉のこと)」という表記あり。彼女は黒人を見下しているようだが、妹がその黒人と子供を作ると、その子供に対しては一定の愛情を注いでいるように見えるのが何となくロシア人の家族的な社会っぽいなぁと見ながら思っていた。妹のことも馬鹿な女だとは思っているが(実際イリーナに比べたら頭の回転は遅そうだ)、それでも(ゴッドファーザー的な意味でも)家族は守るものだ。
強引な見方で反論はあるかもしれないが、このイリーナの役についても、この映画で一貫して描かれている善悪の境界線を見るべきかなと個人的には思う。とすれば家族への愛情を理解することが(ちょっと描写は少ないけれど)この善に値するかな、と感じた。ファミリーのためにやるべき仕事をこなせる者がいれば上手く利用すればいいだけのことで、妹とその子供は安全な場所に置いておくことが、逆にマイケルへのよい保険となるのだからね。
それからケイトは、ぱっと聞いた感じではロシア語訛りの英語を話していて、使う単語もあまり複雑ではないのだけれど、イスラエル出身という役柄なので、複数の方言を研究して発音を作り上げたそうで、確かに欧米の役者は発音記号から勉強するとはいってもさすがの役者魂を見せてもらった。外見や立ち振る舞いも見事で、他の役者はあえて泥臭い役作りをしたとはいえ、彼女だけは一味違う存在感を出していた。

ジェフとクリスは叔父と甥であるが、この犯罪社会において彼らが血縁という絆で結ばれていれば、それはジェフの判断を鈍らせて、彼の属する特殊な社会で個人の限界を見せつけずにはいられない。どうやらジェフも裏の世界(マフィア?)に通じているフシがあり、しかしそこにクリスを巻き込むことに若干の躊躇があるようだとも読める。ルパン三世か、ブルースブラザーズか、という感じの警察車両全集結のシークエンスは、空撮を挟んだ高速で壮大な映像の快感ではあるけれど、結局ジェフが本来やるべきことが社会的正義であれ、裏の仕事の清算であれ、そこを捨てるようにして個人的な感情に囚われたその姿を見ている側はちょっと苦々しく思う。銃弾にしてみればそれが誰であれ関係はないのだけれど、多くの人にとっては(この犯罪都市であってさえも)そうではない。それがマーカスとジェフにとっては誤算だった。その対比がここで際立ったように思える。それだけに銃と同じ存在感を持つフランコの冷酷な様子は不気味だった。

あと笑うに笑えないのは、ジェフ役のウディ・ハレルソン(繰り返すが一応警官)が中毒の女性の前でコカインらしきものを吸い込むシーン。色々な意味で怖い。

改めて書く必要もないだろうが、その他各俳優の演技はどれも見事。特にケイシー・アフレックは、兄のベン・アフレックの陰に隠れがちだがちょっとかわいい感じの声質とかも含めていい役者だと思う。今作ではスペイン語もちょっと披露。


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[ 2016/07/06 00:00 ] Movies | TB(0) | CM(0)

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