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新垣隆&吉田隆一 - N/Y (2014)

Artist : 新垣隆&吉田隆一
Album : N/Y
Release : 2014
Memo : 作曲家、ピアニストの新垣隆さんとバリトンサックス奏者の吉田隆一さんのデュオ。終始柔らかいタッチで、揺れの少ないリズムを持つピアノと、音質を細かく入れ替えながら変幻自在にリズミカルなフレーズを挟むバリサクは、一見かなり離れた個性だけれども、これが妙に融合している。バリトンサックスを聞く機会がある人はそう多くないと思うし、これとピアノのデュオとなるとかなり珍しいような気がするが、聞くほどにその世界観に魅せられてしまう。ジャズとクラシックの中間というか、いいとこどりという楽曲が並んで、楽しさが先に来るのがいい感じ。

新垣隆さんについては多くの人がご存知のことと思うのでここでは詳細は省く。ただ相当に優れたピアニストである。あえてジャズのリズムで演奏するようなことはないが、即興演奏の達人であることが分かって新しい印象を持った。上記の通り、彼のタッチは柔らかく、一見ジャズとは違うようだが、しかしライブではかなり遊び心のある展開を見せていて、そのたびに吉田さんも「お、そう来るか…」みたいな表情を何度も浮かべていたのが印象的だった(新垣さんの演奏や表情を確認できない席だったのが残念)。

録音ではベヒシュタインを使っていることもあり、淡いフレーズを弾いた時にその特性が発揮されているようにも感じたが、音量が小さいこともあり、僕のパソコン環境ではちょっと音像をとらえにくい時も結構あるのが少し残念。恐らくライブではヤマハがほとんどだろうけれども、僕が実際に見た時には自身の音色と演奏スタイルを実直に貫いていた。エリントンの「Sophisticated Lady」では長めの優しいピアノソロが堪能できる。

対して、吉田さんのプレイは変幻自在だ。激しい音から柔らかい音、重々しい音から軽やかな音、安定したピアノをバックにとにかく自由に飛び回る。改めてバリサクってこんなに表現力豊かな楽器なのかと感嘆させられた。

アルバムでは爆発的なフリージャズ要素は抑え気味。いや、アルバムの性格を考えれば”結構ある”と言うべきか?ただ調性的でない曲も多く、暮色蒼然というか、終末的な世界観もある。その合間に、「怪獣のバラード」みたいなポップでメロディアスな曲もある。フリージャズ、現代クラシック音楽の調性感、ジャズスタンダードのメロディアスさ。色々な要素が流れるように展開していくので、二つの楽器でオーバーダビングも無い演奏とは思えないほどに表情豊かだ。

吉田隆一さんの人柄についてはtwitterで活発に発言を行っているのでそちらで。サックス奏法や、ジャズの名曲についてなど、かなり詳細な分析が読めたりもするが、同時に結構なSF/アニメファンで、このアルバムでもSF作家へのオマージュを二曲書いている。
かなり明るいツイートをするので、そういう音楽性かと思いきや、プレイは意外と冷ややかで、冷静。ライブでは熱くなった演奏もあったけれど、多分演奏そのものにはまず一歩引いたスタンスから入っているのだと思う。
そういう要素を味わえるオリジナルの一曲が「野生の夢 - 水見稜に - 」というもので、僕としては本作のベストトラック。シーケンス的なフレーズから近未来の世界観を提示して、そこから徐々に展開していく。ジャズ的な変移でもあるし、シンプルな主題のミニマルな変移でもある。両方の要素を持っていて、なおかつ自然に融合している。盛り上がりの頂点は一瞬だが、そこに至るまでも全編を通して、十分な聞きごたえがある。

カバーとスタンダードからは武満徹の「明日ハ晴レカナ、曇リカナ」が良いと思う。この二人が共通して持っているメロディセンスが、武満の世界にあるものをうまくすくい取っているように聞こえた。考えてみれば、エリントンを二曲カバーするアルバムを武満で締める、そんなものをジャズと現代音楽の音楽家が作ってくれるなんて、武満も大満足だろう(武満が最も憧れていた作曲家の一人はエリントンだった)。


ライブを見ていて感じたのは新垣さんは人が思うよりももっと音楽の中に生きている人だろうし、吉田さんは思った以上に明るい(アニメ)オタクお兄さんだったということ。サインまでもらってしまった…黒羊のTシャツを買えば良かったかな?二人とも現在40代であまり差は無いこともあるし(新垣さんが70年、吉田さんが71年生まれ)、明るく話題の豊富な吉田さんが前に出てプレッシャーを引き受けている感じもして、人間的にもとてもいい状態にあったのだろうと思った。ただ最後に一応書いておくと、一連の騒動については特に深く調べているわけでもないので、誰が良い人で誰が悪い人という印象や考えは特に持っていない。強いて言えば不幸なビジネスだったということで。まぁ普通の音楽オタクが見ているだけでも、業を抱えない音楽家はむしろあまりいないのかなと。

個性と個性がぶつかりあうというより、違う個性のまま手を取り合って前へ進む。この二人の偶然なのか、このタイミングの偶然なのかは分からないけれど、これは異ジャンルの融合の一つの見本にもなり得るかな、という。もしかしたら今後二人のやり方によっては上手くいかない事があるかもしれないような大きな差のある個性であるけれども、ここではとてもうまくいっている。
そして今後とも時々この二人の演奏が聞ければいいかなと思った。
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[ 2015/06/27 06:00 ] M/Jazz-Fusion | TB(0) | CM(0)

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